こんにちは。ウイスキーガイド、運営者の「のい」です。
「5大ウイスキー」って聞くと、スコッチやバーボンはすぐに浮かびますけど、「あれ?なぜアジアから日本だけ?」って、素朴な疑問がわきますよね。
私もウイスキーにハマり始めた頃、世界3大ウイスキーという言葉は聞いたことがあったので、いつの間にか「5大」になっていて、しかも日本が当然のように入っていることに驚きました。
この「5大」という枠組みはいつ、誰が決めたんでしょうか?もしかして日本だけで使われている言葉…?
5大ウイスキーそれぞれの特徴ってどう違うの?最近聞く世界6大ウイスキーという言葉との関係は?
サントリーとの関係性も気になるし…と、疑問が尽きないですよね。
この記事では、「5大ウイスキー 日本だけ」というキーワードの背景にある謎を一つひとつ解き明かしながら、この呼称の真実や、ジャパニーズウイスキーが世界で認められた理由を検証していきます。
記事のポイント
- 世界5大ウイスキーの正確な定義と特徴
- 「3大」や「6大」との違い
- なぜ日本だけがアジアから選ばれたのか、その理由
- 世界一の評価を受ける日本の代表的な銘柄
5大ウイスキーで「日本だけ」の理由は?

ウイスキーガイド イメージ
まずは、この「5大ウイスキー」という言葉の基本から見ていきましょう。
この枠組みに「日本だけ」が含まれている理由が、だんだんと見えてくると思いますよ。
ここでは、5つのウイスキーの定義や特徴、日本が選ばれた背景、そして代表的な銘柄まで、じっくりと掘り下げていきますね。
5大ウイスキーの定義と特徴

ウイスキーガイド イメージ
「世界5大ウイスキー」というのは、ウイスキー好きの間では常識になりつつある言葉ですよね。
これは、法的にガチガチに決められた分類というよりは、世界的に生産量が多く、品質や知名度が高い5つの国のウイスキーを指す、業界の慣習的な呼称です。
具体的には、以下の5つを指します。
【世界5大ウイスキーの5カ国】
- スコッチウイスキー(スコットランド)
- アイリッシュウイスキー(アイルランド)
- アメリカンウイスキー(アメリカ)
- カナディアンウイスキー(カナダ)
- ジャパニーズウイスキー(日本)
それぞれに法律や伝統で定められたルールがあって、味わいにもはっきりとした特徴があります。
一覧表にすると、その違いが分かりやすいかもしれません。
| カテゴリ | スコッチ | アイリッシュ | アメリカン | カナディアン | ジャパニーズ |
|---|---|---|---|---|---|
| 主な原料 | 大麦麦芽、穀類 | 大麦麦芽、未発芽大麦、穀類 | トウモロコシ、ライ麦、小麦など | トウモロコシ、ライ麦など | 大麦麦芽(必須)、穀類 |
| 製法の特徴 | ピート(泥炭)での乾燥。 単式蒸留機で2回蒸留が伝統。 | ピートを使わないことが多い。 単式蒸留機で3回蒸留が伝統。 | 内側を焦がした「新樽」での熟成が義務(バーボン)。 | ブレンドが主流。 ライトな酒質。 | スコッチを手本。 独自の「造り分け」技術。 |
| 最低熟成年数 | 3年以上(オーク樽) | 3年以上(木樽) | ストレートは2年以上(新樽) | 3年以上(木樽) | 3年以上(木樽)※新基準 |
| 味わいの特徴 | スモーキー、力強い。 | スムース、まろやか。 | 甘く、力強いバニラ香。 | ライト、マイルド、クセが少ない。 | 繊細、複雑、バランスが良い。 |
この5つが並び称されるのが、現在のウイスキー界のスタンダードになっているかなと思います。
世界3大ウイスキーとの違いは?

ウイスキーガイド イメージ
「あれ?昔は世界3大ウイスキーって聞いたけど?」と思った方、鋭いですね。
私もそうでした。
ウイスキーといえばスコッチ、アイリッシュ、アメリカン(特にバーボン)...
この3つが伝統的な「三大ウイスキー」として、長い間ウイスキー界の中心だったのは間違いありません 。
この3つは、ウイスキーの歴史そのものを作ってきた存在です。
スコットランドとアイルランドは「ウイスキーの元祖」とも呼ばれ、アメリカは新大陸で独自のバーボン文化を花開かせました。
まさに歴史と生産量、知名度のすべてを兼ね備えた「王道」だったわけですね。
では、いつから、なぜ「5大」という呼び方が主流になったんでしょうか?
この枠組みを「3」から「5」へと拡張させた最大の立役者こそが、ジャパニーズウイスキーの劇的な国際的台頭なんです 。
2000年代に入るまで、正直なところ、日本のウイスキーは「スコッチの模倣」というイメージが海外では強く、世界的な知名度は高くありませんでした。
その空気を一変させたのが、2000年代初頭から始まった国際的なコンペティションでの快進撃です。
【歴史の転換点:2003年】
その号砲となったのが、2003年、サントリーの「山崎12年」が、世界的に権威のある酒類コンペティション「ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)」で金賞を受賞したことです。
これは、日本のウイスキーが初めて、本場ヨーロッパの審査員たちに「品質」で真っ向から認められた、歴史的な出来事だったと思います。
(出典:サントリー公式サイト「主なコンペテイション受賞歴」)
この受賞を皮切りに、「山崎」だけでなく、「響」やニッカの「竹鶴」といった銘柄が、ISCや「WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)」といった最高峰の舞台で、毎年のように「ワールド・ベスト(世界一)」の称号を獲得し始めました。
この日本の圧倒的な「品質」と、同じくアメリカの禁酒法時代から巨大な市場を確立していた「カナディアンウイスキー」が加わったことで、伝統的な「3大」の枠組みは更新され、「世界5大ウイスキー」という呼称が新しいスタンダードとして定着していった、というのが実情のようです。
なので、「3大」と「5大」の違いは、単純にジャパニーズウイスキーがその品質で、世界のウイスキー地図を塗り替えた歴史そのもの、と言えるかもしれませんね。
アジアで日本が選ばれた背景

ウイスキーガイド イメージ
では、なぜアジアの他の国、例えばウイスキー消費大国のインドや、近年「カバラン」などで世界を驚かせている台湾などではなく、「日本だけ」が選ばれたのでしょうか。
インドや台湾のウイスキーも、国際的なコンペティションで最高賞を受賞するなど、品質は折り紙付きです。
それでも「5大」の枠組みに後から入ってきたのが日本だったのには、他の国にはない、はっきりとした理由がありました。
1. 100年の歴史を持つ「先駆者」の存在
まず何より、ウイスキー造りに取り組んだ「タイミング」が違います。
日本の本格的なウイスキー製造は、1923年にサントリー創業者の鳥井信治郎氏が山崎蒸溜所を設立したことから始まります。
これは、他のアジア諸国が本格的な製造を始めるより、何十年も早いスタートでした。
そして、その礎を築いたのが、鳥井氏と、ニッカウヰスキー創業者であり「日本のウイスキーの父」と呼ばれる竹鶴政孝氏です。
【ジャパニーズウイスキーの二人の父】
この二人のビジョンは、同じ方向を向いていなかったと言われています。
- 鳥井信治郎(サントリー創業者):
あくまで「日本人の繊細な味覚に合うウイスキー」を追求しました。 - 竹鶴政孝(ニッカウヰスキー創業者):
本場スコットランドで技術を学び、「本物のスコッチ」の味を日本で再現することに生涯を捧げました。
(出典:ニッカウヰスキー「創業者 竹鶴政孝」)
この「日本市場への最適化」と「本場への徹底的なこだわり」という二つの異なるベクトルが、結果として初期のジャパニーズウイスキーに多様性と深みをもたらしたんだと思います。
2. スコッチと一線を画す独自の「製造哲学」
日本が単なる「模倣」で終わらなかった最大の理由が、製造の哲学、特に「造り分け(Tsukuriwake)」という世界でも珍しい技術にあります。
スコットランドには100を超える蒸溜所があり、ブレンダー(例えばジョニーウォーカーなど)は、いろいろな蒸溜所から多種多様な原酒を「買い集めて」ブレンドを行います。
一方、日本では歴史的に、サントリーとニッカといった大手メーカー間で原酒の交換(トレード)がほとんど行われませんでした。
「それなら、自分たちでやるしかない」。
この制約が、「一つの蒸溜所の中で、ありとあらゆるタイプの原酒を自前で造り分ける」という、驚くべきイノベーションを生み出しました。
例えば、サントリーの山崎蒸溜所やニッカの余市蒸溜所では、発酵に使う酵母の種類を変えたり、形の違う蒸留器を何種類も使い分けたり、そして熟成に使う樽の種類(バーボン樽、シェリー樽、そして日本固有のミズナラ樽など)を多様に揃えることで、一社だけで複雑なブレンドに必要な「絵の具」をすべて用意しているんです。
これは、世界的に見ても非常にユニークな体制だと言えます。
3. 「調和」を重んじるブレンディング技術
そして、その「造り分け」た多彩な原酒を、最終的に一つの作品に昇華させるのが、日本のブレンダーの技術です。
彼らが目指すのは、バーボンのような強烈な甘さや、アイラモルトのような強烈なスモーキーさではなく、「調和(Harmony)」です。
日本の「繊細で洗練された」食文化に合うように、それぞれの原酒の個性を消すことなく、完璧なバランスでまとめ上げる。
サントリーの「響」というウイスキーは、まさにその「調和」という哲学を体現した製品ですよね。
この「100年の歴史」と、そこから生まれた「独自の製造哲学(造り分けと調和)」こそが、他の新興国とは一線を画す、アジアで「日本だけ」が選ばれた決定的な背景なんだと思います。
5大ウイスキーの代表的な銘柄

ウイスキーガイド イメージ
「じゃあ、それぞれの国で有名なウイスキーって何?」と気になりますよね。
ひとくちに「5大」と言っても、それぞれの国を代表する「顔」となるボトルがあります。
ここで言う「代表的な銘柄」というのは、その国のウイスキーのスタイルを確立した歴史的なブランドだったり、世界的に最も飲まれているシェアNo.1のブランドだったりします。
それぞれの国の特徴を思い出しながら、具体的な銘柄を見ていきましょう。
スコッチウイスキーの銘柄
スコッチといえば、まずは「ブレンデッドウイスキー」が世界を席巻していますよね。
世界で飲まれるスコッチの約9割がブレンデッドと言われるほどです。
ジョニーウォーカー
ジョニーウォーカー ブラック 黒 ラベル 12年 700ml
「ジョニ黒」「ジョニ赤」でおなじみ。四角いボトルと歩く紳士のロゴは、まさにスコッチの象徴ですね。
世界で最も飲まれているスコッチウイスキーかもしれません。
バランタイン
バランタイン 17年 40度 並行 箱付 750ml
「バランタイン17年」は、ブレンデッドの最高峰として日本でもすごく人気があります。
バランスの取れた味わいです。
シーバスリーガル
シーバスリーガル 12年 40度 700ml
リッチでスムースな味わいが特徴で、「ブレンデッドスコッチのプリンス」なんて呼ばれ方もしますね。
もちろん、蒸溜所の個性や風土が色濃く出る「シングルモルト」も欠かせません。
スモーキーな「アイラモルト」や華やかな「スペイサイドモルト」など、産地ごとの個性を知ると、さらに奥深い世界が待っています。
アイリッシュウイスキーの銘柄
アイリッシュといえば、あの「スムースさ」です。伝統的な3回蒸留がその秘密ですね。
ジェムソン
ジェムソン アイリッシュウィスキー 700ml
世界で最も飲まれているアイリッシュウイスキーです。
ピートを使わない、あの雑味のないクリーンな味わいとスムースな口当たりは、アイリッシュ入門にぴったりだと思います。
ブッシュミルズ
ブッシュミルズ ブラックブッシュ アイリッシュ ウイスキー 700ml 40%
現存する世界最古のウイスキー蒸溜所とも言われる、歴史ある銘柄です。
こちらも3回蒸留で非常に滑らかですね。
アメリカンウイスキーの銘柄
アメリカといえば、やっぱり「バーボン」ですよね。
原料のトウモロコシ由来の甘さと、法律で定められた「内側を焦がした新品のオーク樽」から来る、あのバニラやキャラメルのような香ばしい香りがたまりません。
ジムビーム
ジム ビーム 40度 箱なし 700ml
世界No.1バーボンとも言われ、ハイボールでもおなじみですね。
バーボンのスタンダードだと思います。
メーカーズマーク
ウイスキー メーカーズマーク 700ml
1本ずつ手作業で施される赤い封蝋(ふうろう)が目印。
まろやかでリッチな味わいが人気です。
【豆知識】ジャックダニエルは?
「ジャックダニエル」も超有名ですが、これはバーボンではなく「テネシーウイスキー」という別のカテゴリなんです。製造工程で「チャコール・メローイング」という、サトウカエデの炭で原酒をろ過する一手間が加わっているのが大きな違いですね。
カナディアンウイスキーの銘柄
5大ウイスキーの中では「最もライトでマイルド」と言われるのがカナディアン。
穀物を主原料にしたライトな「ベースウイスキー」と、風味付けの「フレーバリングウイスキー」をブレンドするのが主流です。
カナディアンクラブ
カナディアンクラブ 40度 700ml
「C.C.」の愛称で親しまれ、世界中で飲まれているカナディアンの代表格です。
クセがなくて本当に飲みやすいので、カクテルのベースとしてもぴったりです 。
クラウンローヤル
ウイスキー クラウン ローヤル 750ml
紫色の巾着袋に入ったボトルが有名ですね。
こちらも非常にスムースな味わいです。
ジャパニーズウイスキーの銘柄
そして、我らがジャパニーズウイスキー。
今や世界中から注目を集める銘柄ばかりで、次のセクションで紹介する「世界一」の受賞歴を支えてきた顔ぶれです。
山崎
サントリー シングルモルトウイスキー 山崎 NV 43度 箱付 700ml
日本初のモルトウイスキー蒸溜所から生まれた、シングルモルトの金字塔です。
華やかで複雑な味わいは、まさに日本を代表するウイスキーですね。
白州
サントリー 白州 NV ノンヴィンテージ 700ml 43度 箱付
「森の蒸溜所」で造られる、爽やかなスモーキーさ(ライトリーピーテッド)と、キレのある味わいが特徴のシングルモルト。
響
サントリー ウイスキー 響 ジャパニーズ ハーモニー 43度 箱付 700ml
日本の「調和」の精神を体現した、最高峰のブレンデッドウイスキーです。
多彩な原酒が織りなすハーモニーは、海外でも絶賛されています。
竹鶴 ・余市
竹鶴ピュアモルト ウイスキー 日本 700ml
ニッカ シングルモルト 余市 45% 700ml
ニッカウヰスキーを代表する銘柄。
竹鶴はブレンデッドモルト、余市はスコットランド伝統の石炭直火蒸溜による、力強くスモーキーなシングルモルトとして知られています。
こうして並べてみると、ジャパニーズウイスキーの銘柄が、世界の名だたるウイスキーと堂々と肩を並べているのがよくわかりますね。
世界一の評価を受けた日本の銘柄

ウイスキーガイド イメージ
「世界一」という言葉は、実は単なるキャッチコピーではなく、非常に具体的で客観的なものです。
ウイスキーの世界には、非常に権威のある国際的なコンペティションがいくつかあり、その中でも特に有名なのが、以下の二大巨頭です。
ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)
ロンドンで毎年開催される、世界的に最も権威ある酒類コンペティションの一つです。
ウイスキーだけでなく、ジン、ウォッカ、テキーラなど、あらゆるスピリッツが審査対象となります。
WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)
イギリスの『ウイスキーマガジン』が主催する、ウイスキーのみを対象とした世界的なコンペティションです。
これらのコンペティションで、専門家による厳格なブラインドテイスティングを経て「部門最高賞(ワールド・ベスト)」や、全ジャンルの中での総合最高賞を受賞することが、「世界一」と呼ばれる最大の根拠になります。
そして、日本のウイスキーは、もはや「受賞候補」ではなく、これらの賞の「常連」なんです。特に二大メーカーの功績は圧倒的です。
ニッカウヰスキーの揺るぎない功績
ニッカの「竹鶴ピュアモルト」は、WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)において、「ワールド・ベスト・ブレンデッドモルトウイスキー」(旧称含む)の部門で、これまでに10回も世界最高賞を受賞しています。
10回というのは、驚異的な数字ですよね。
これは、ニッカのブレンディング技術が、長期間にわたって世界最高水準にあるという、揺るぎない証明だと思います。
その品質の高さは、まさに折り紙付きですね。
サントリー「響」- 世界が認める"調和"の象徴
サントリーの「響」は、ジャパニーズウイスキーの「調和(Harmony)」という哲学を世界に知らしめた立役者です。
特に「響21年」は、WWAにおいて「ワールド・ベスト・ブレンデッドウイスキー」の座を、2010年、2011年、2013年、2016年、2017年、2019年など、枚挙にいとまがないほど繰り返し受賞しています。
ブレンデッドウイスキーという最も競争の激しい部門の一つで、これだけ長期間にわたり頂点に立ち続けるというのは、サントリーのブレンダーチームの技術が、いかに卓越しているかを示していると思います。
サントリー「山崎」- 歴史的快挙と"絶対王者"の称号
そして、近年特に圧倒的な評価で世界を驚かせているのが、サントリーの「山崎」です。
これが本当にすごいのですが、「山崎」ブランドは、ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)において、ウイスキー部門だけでなく、出品された全スピリッツ(ジン、ウォッカ、テキーラ等含む)の頂点である「シュプリーム・チャンピオン・スピリット」を3年連続で受賞するという、歴史的な快挙を成し遂げました。
【山崎ブランド ISC 3年連続 最高賞受賞】
- 2023年:山崎25年
- 2024年:山崎12年
- 2025年:山崎18年
ISCの30年の歴史において、同じブランドが3年連続でこの総合最高賞を受賞するのは、史上初めてのことだそうです。
(出典:サントリー公式サイト「主なコンペテイション受賞歴」)
さらに驚くべきは、受賞したのが「25年」「12年」「18年」と、すべて異なる熟成年数のボトルであることです。
これは、特定のボトルが優れているというだけでなく、「山崎」というウイスキーのスタイルそのものが、根本的に世界最高水準にあることを証明しています。
アジアで「日本だけ」が5大ウイスキーと呼ばれる理由は、こうした「圧倒的かつ客観的な品質の証明」が、議論の余地なく存在しているからなんですね。
5大ウイスキーは日本だけの用語か検証

ウイスキーガイド イメージ
前半では、5大ウイスキーの定義や、日本が選ばれた理由を見てきました。
でも、ここで一つの疑問が浮かびます。
この「5大ウイスキー」という呼び方、ひょっとして日本だけで使われている言葉なんでしょうか?
海外でも通じるのか、ちょっと気になりますよね。
この後半では、そのあたりを検証していきたいと思います。
海外での「5大」の認知度

ウイスキーガイド イメージ
この「5大ウイスキー」という呼び方、私もすごく気になっていました。
「ひょっとして、これって日本だけで使われている、一種の『和製英語』なんじゃないの?」って。
そこで、海外(主に英語圏)のウイスキー専門サイトやフォーラムを色々と調べてみたんです。
すると、面白いことが分かりました。
結論から言うと、「日本だけで使われている、完全な和製英語」とまでは言えないけど、日本ほどメジャーで固定化された言葉ではないみたい、というのが私の感触です。
確かに、海外のウイスキー専門サイトや記事でも「the Big Five」(ビッグファイブ)や「five major whisky regions(5つの主要なウイスキー産地)」といった表現で、スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本を指す例は、ちゃんと見つかります。
なので、「この5カ国が現在のウイスキー界の主要プレイヤーである」という認識は、海外のウイスキー愛好家の間でもある程度は共有されているようです。
【豆知識】ややこしい「もう一つのBig 5」
ちなみに、ウイスキーの世界、特にスコッチの歴史を語る上で「ビッグ5(The Big 5)」と言うと、全く別の意味になることがあるので注意が必要かもしれません。
それは、歴史的にブレンデッドスコッチを世界に広めた「5大ブランド」のことを指すんです。
- ジョニーウォーカー (Johnnie Walker)
- デュワーズ (Dewar's)
- ヘイグ (Haig)
- ホワイトホース (White Horse)
- ブキャナンズ (Buchanan's)
文脈によって意味が異なるのは面白いですよね。
ただ、日本で私たちが「世界五大ウイスキー」と言う時の、あの「確立された分類」という強いニュアンスとは、海外では少し違うかもしれません。
これは私の推測も入りますが、日本のウイスキーメーカーや酒販店が、ジャパニーズウイスキーの品質をアピールするために、この「5大」という枠組みを積極的に使ってきた側面もあるのかな、と感じました 。
「日本のウイスキーは、スコッチやバーボンと並び称される『5大』の一つなんですよ」と提示することは、その価値を高める上で非常に分かりやすいキャッチコピーになりますからね 。
サントリーの5大ウイスキー戦略

ウイスキーガイド イメージ
この「5大ウイスキー」という枠組みは、日本のウイスキーを語る上で欠かせないんですが、この枠組みを最も戦略的に活用しているのが、まさに日本のサントリーだと思います。
サントリーの公式サイトのお客様センターQ&Aなどを見ても、この「5大」の分類を公式に使って、自社グループが扱うウイスキー(ジムビームやカナディアンクラブ、カネマラなど)をきれいに分類して紹介していますよね。
なぜサントリーがこの「5大」という言葉を積極的に使うのか。それは、「サントリーグループ(ビーム サントリー社)が、世界5大ウイスキーの生産国すべてに、自社グループの蒸溜所を持っている」という、世界でも非常にまれな企業だからなんです。
【サントリーグループが持つ5大産地の蒸溜所(一例)】
- 日本: 山崎蒸溜所、白州蒸溜所
- スコットランド: ラフロイグ蒸溜所、ボウモア蒸溜所
- アメリカ: ジムビーム蒸溜所、メーカーズマーク蒸溜所
- カナダ: (カナディアンクラブの原酒を製造)
- アイルランド: クーリー蒸溜所 (カネマラなど)
この世界的な強みを最大限に活かし、まさに「5大ウイスキー戦略」の象徴として2019年に発売されたのが、サントリーワールドウイスキー「碧Ao(あお)」です。
(出典:サントリー ニュースリリース 2019.1.10)
この「碧Ao」は、世界で初めて、サントリーが自社で保有する5大ウイスキー産地の原酒「だけ」をブレンドして造られたウイスキーなんです。
ただ「混ぜた」だけではないのが、サントリーらしいところです。
ボトルのデザインが、5大産地を象徴する「五角形」であることからも分かる通り、このプロジェクトは、サントリーの第5代チーフブレンダーである福與伸二氏が指揮を執っています。
まさに、「響(Hibiki)」で培われた、日本の「調和(Harmony)」のブレンディング技術と、「ものづくり(Monozukuri)/ 造り分け(Tsukuriwake)」の哲学をもって、個性の異なる世界の5大ウイスキーを、日本の感性で束ね上げるという、壮大な試みですよね。
「5大ウイスキー」という言葉は、サントリーにとって、自社がその全ての頂点に立つブレンダーであることを示す、非常に重要なキーワードになっているんだと思います。
世界6大ウイスキーの可能性

ウイスキーガイド イメージ
関連キーワードで「世界6大ウイスキー」というのもありました。
これは、ウイスキー好きなら誰もが考える、ワクワクする疑問ですよね!
「5大」が確立された今、「じゃあ、次に『6番目』に入るのはどこだ?」という、ウイスキー界の未来に対する期待の表れだと思います。
この「6番目の席」をめぐる議論で、現在最も有力な候補として名前が挙がるのが、台湾とインドです。
この2カ国は、もはや「新興勢力」とは呼べないほどの圧倒的な品質で、世界を驚かせています。
台湾:亜熱帯気候が生む「超」急速熟成
台湾のウイスキーシーンを牽引しているのは、なんといっても「Kavalan(カバラン)」蒸溜所です。
カバラン クラシック シングルモルトウイスキー 40% 700ml
台湾ウイスキーの最大の特徴は、その「気候」にあります。
スコットランドが「冷涼で湿潤」なのに対し、台湾は「高温多湿な亜熱帯気候」です。
この暑さが、ウイスキーの熟成プロセスを劇的に加速させます。
ウイスキーは樽の中で呼吸し、熟成していくわけですが、この速度がまったく違うんです。
その証拠に、熟成中に蒸発してしまうウイスキーの量、いわゆる「天使の分け前(Angel's Share)」の量が凄まじいんですね。
【気候と熟成速度の比較】
- スコットランド: 涼しく湿潤。天使の分け前は年間約2~3%。熟成はゆっくりと進みます。
- 台湾(カバラン): 高温多湿。天使の分け前は年間12%にも達すると言われています。
この激しい熟成の結果、例えば「カバラン」の4~6年熟成のウイスキーが、スコッチの15年~25年熟成ものに匹敵するほどの、濃厚でリッチな味わい(トロピカルフルーツのような香り!)を持つと言われています。
実際に、WWAなどの国際コンペティションで最高賞を受賞しており、その品質は世界トップレベルと認められています。
インド:巨大市場と世界クラスの品質
もう一方の有力候補が、インドです。
インドは、実はスコッチウイスキーの「世界最大の消費国」(数量ベース)であり、巨大なウイスキー市場を持っています。
以前は国内向けのスピリッツが主流でしたが、近年は「Amrut(アムラット)」や「Indri(インディ)」といった本格的なシングルモルトウイスキーが国際的なコンペティションで賞賛されています。
ウイスキー アムルット(アムラット) ライ シングルモルト 700ml
インドも台湾と同様に非常に暑い気候のため、熟成が速く、力強い味わいのウイスキーが生まれます。
世界最大の市場を背景に、世界トップクラスの品質を生み出してきたインドは、「6番目」の最有力候補の一つと言って間違いないでしょうね。
今のところ「6大」という言葉は、まだ業界のスタンダードとして定着していません。
「5大」という枠組みには、やはり日本が持つ100年近い歴史や、カナダが持つ巨大な市場の確立といった「歴史的な重み」がまだ大きく影響しているんだと思います。
でも、台湾やインドの品質と人気がこのまま続けば、いつか「5大」という言葉自体が古いものになって、「世界7大ウイスキー」なんて呼ばれる日が来るかもしれませんね。
ウイスキー好きとしては、すごくワクワクします!
日本三大ウイスキーの値段とは

ウイスキーガイド イメージ
「5大ウイスキー」という大きな枠組みの前に、まず「日本三大ウイスキー」という言葉もありますね。これは私もよく耳にします。
ただし、これは法的な定義やメーカーの公式な分類ではありません。
一般的に、国内で最も知名度が高く人気のある、サントリーの「山崎」「白州」「響」という3つのブランドを指す愛称のようなものみたいですね。
ご質問の「値段」についてですが、これは非常に悩ましい問題です…。
というのも、これらのウイスキーは人気すぎて、メーカー希望小売価格(定価)と、実際に市場で売られている価格(市場価格)が、まったく違うものになっているからです。
定価と市場価格の乖離
なぜこんなことになっているかというと、ジャパニーズウイスキーが世界的なコンペティションで賞を総なめにし始めた2000年代以降、国内外での人気が爆発しました。
しかし、ウイスキーは熟成に長い年月がかかるため、急に増産できません。
特に12年、18年、21年といった「年代物」の原酒が深刻なほど不足しているんです。
その結果、需要と供給のバランスが大きく崩れ、定価で手に入れることが非常に困難になっています。
注意ポイント
価格に関するご注意(YMYL領域への配慮)
ウイスキーの価格、特に「山崎」「白州」「響」の年代物は、コレクション目的での需要も高く、市場価格(二次流通価格)は定価の数倍から十数倍で取引されることも珍しくありません。
ここでお話しするのはあくまで執筆時点での一般的な市場の傾向や参考例であり、価格を保証したり、購入や売却を推奨したりするものではありません。
購入の際は、ご自身で信頼できるお店の価格をよくご確認くださいね。
例えば、ノンエイジ(熟成年数表記なし)の「山崎」や「響 JAPANESE HARMONY」ですら、定価(5,000円前後)で見かけることは稀で、プレミア価格がついていることが多いです。
これが「山崎12年」や「響21年」などになると、市場価格は数万円から十数万円と、定価とはかけ離れた価格になっているのが現状です。
定価で購入する方法は?
「じゃあ、定価ではもう買えないの?」というと、チャンスはゼロではありません。
主な方法は、大手百貨店や、「やまや」などの大手酒販店、イオンなどのスーパーが時折行う「抽選販売」に応募することです。
また、サントリーが公式サイトで行う抽選販売もあります。
私も何度も応募していますが、なかなか当たらないのが現実です…。
あとは、旅先の小さな酒屋さんなどで、奇跡的に定価で出会えるのを祈るくらいでしょうか。
それくらい、現在の「日本三大ウイスキー」の値段は、特殊な状況になっているんです。
山崎と響はどちらが高い?

ウイスキーガイド イメージ
これは、ウイスキー好きの間でもよく話題になる質問ですよね!
「山崎と響、どっちが格上なの?」と。
これも「定価」と「市場価格」で分けて考える必要があります。
結論から言うと、定価はほぼ同等ですが、市場価格(特に年代物)では「山崎」のほうが圧倒的に高額になっています。
エントリーモデル(ノンエイジ)での比較
まず、一番手に入りやすいノンエイジ(熟成年数表記なし)のボトルで比べてみましょう。
- 山崎(ノンエイジ):定価 4,500円(税別)
- 響 JAPANESE HARMONY:定価 5,500円(税別)
意外なことに、定価だけ見ると「響」のほうが高いんです。
ですが、市場価格ではこれが逆転、あるいは山崎のほうが高値で取引されているケースも多く見られます。
人気の「年代物」での比較
この価格差が決定的に開くのが「年代物」です。
ここでは、特に比較対象にされやすい「山崎18年」と「響21年」で見てみましょう。
| 銘柄 | カテゴリ | 定価 (税別) | 市場価格 (参考) |
|---|---|---|---|
| 響 21年 | ブレンデッドウイスキー | 32,000円 | 約65,000円~75,000円 |
| 山崎 18年 | シングルモルトウイスキー | 35,000円 | 100,000円以上 |
定価で比較すると:
「山崎18年」のほうが3,000円高いだけで、熟成年数も考えると、ほぼ同格と言えます。
市場価格で比較すると:
ご覧の通り、差は歴然です。
「山崎18年」は「響21年」の1.5倍近い、あるいはそれ以上の価格で取引されています。
なぜ「山崎」の市場価格は高いのか?
定価はほぼ同じなのに、なぜ市場はこれほどまでに「山崎」を高く評価するのでしょうか。
これには、主に3つの理由があると思います。
理由1:シングルモルトという「希少性」
「響」は、山崎蒸溜所と白州蒸溜所の「モルト原酒」に、知多蒸溜所の「グレーン原酒」をブレンドしたブレンデッドウイスキーです。
一方、「山崎」は、山崎蒸溜所のモルト原酒だけを使ったシングルモルトウイスキーです。
つまり、「響」を造るためにも「山崎」の原酒は不可欠なんです。
その大元であり、かつ単一で製品化される「シングルモルト山崎」のほうが、絶対的な原酒の量が少なく、希少性が高いとされています。
理由2:「世界最高のスピリッツ」という絶対評価
前のセクションでも触れましたが、ISC(インターナショナル・スピリッツ・チャレンジ)において、「山崎」ブランドは3年連続(2023年, 2024年, 2025年)で全スピリッツの頂点である「シュプリーム・チャンピオン・スピリッツ」を受賞しました。
特に「山崎18年」が2025年の最高賞に輝いたことで、その価値はコレクターズアイテムとして天井知らずになっています。
理由3:「ミズナラ樽」というストーリー
ジャパニーズウイスキーを象徴する「ミズナラ(ジャパニーズオーク)樽」。
この樽で熟成させると生まれる「香木(こうぼく)」や「白檀(びゃくだん)」のようなオリエンタルな香りは、世界中のウイスキーファンを魅了しています。
そして、そのミズナラ樽の魅力を最大限に引き出したフラッグシップこそが「山崎」なんです。
この唯一無二のストーリー性も、価格を押し上げる大きな要因ですね。
(「山崎」について、もっと深く知りたくなった方は、山崎の詳しいレビュー記事もぜひ。また、「響」の魅力については響のレビュー記事で解説しています。)
5大ウイスキー「日本だけ」の総括

ウイスキーガイド イメージ
ここまで、「5大ウイスキー 日本だけ」というキーワードの謎について、じっくりと検証してきました。
検索してこの記事に来てくださった方の「なぜ?」という疑問に、少しは答えられたかなと思います。
最後に、この記事のポイントをまとめて総括しますね。
結論1:「5大ウイスキー」は日本で定着した呼称。海外でも「Big Five」として認知
まず、「5大ウイスキー」という言葉は日本だけのものか?という疑問ですが、私の検証では「日本で特に定着した呼称」であり、「海外でも『Big Five』としてその品質を認める文脈で使われることがある」という結論でした。
完全に日本だけで使われている「和製英語」とまでは言えないけれど、日本で使われるほど厳密な「分類」としては使われていない、という感じですね。
結論2:「日本だけ」の理由は、独自の製造哲学が生んだ「圧倒的な品質」
そして、最も核心的だった「なぜアジアで日本だけ?」という理由。
これは、単に「国際コンペで賞を獲ったから」という表面的なものではありませんでした。
竹鶴政孝氏や鳥井信治郎氏といった先人たちの情熱が、「スコッチの模倣」に留まらない、日本独自の製造哲学を生み出しました。
それが、原酒を交換し合わない環境から生まれた「造り分け(Tsukuriwake)」という世界でも稀な技術であり、日本固有の「ミズナラ樽」がもたらす香木のような香りで、そしてそれらを「調和(Harmony)」の精神でまとめ上げる、日本人の繊細なブレンディング技術でした。
ISCやWWAといったコンペは、その「唯一無二の品質」を発見し、証明したに過ぎません。
まぎれもなく、「品質」こそが、日本が選ばれた唯一の理由だったんですね。
結論3:品質と希少性が、価格という「価値」に反映されている
「日本三大ウイスキーの値段」や「山崎と響はどちらが高い?」という疑問も、この「品質」と「希少性」が、市場価格に素直に反映された結果だということが分かりました。
特に「山崎」が、シングルモルトとしての希少価値に加えて、ISCで3年連続「全スピリッツの頂点」に輝いたという事実は、その価格を押し上げる決定的な要因になっていましたね。
【ジャパニーズウイスキーの未来】
最後に、ジャパニーズウイスキーの未来についてです。
2021年に日本洋酒酒造組合によって「ジャパニーズウイスキー」の厳格な定義(日本国内での糖化・発酵・蒸留・3年以上の貯蔵など)が策定され、2024年4月から完全施行となりました。
これは、先人たちが100年かけて築き上げた「ジャパニーズウイスキー」というブランドを、業界全体で守っていくという強い意志の表れです。
これにより、「本物のジャパニーズウイスキー」としてのブランド価値がさらに高まっていくのは間違いないですね。
これからも日本のウイスキーが世界でどんな評価を受けていくのか、そして「世界6大ウイスキー」の座に台湾やインドが名乗りを上げるのか、ウイスキー好きとして注目していきたいですね。
【参考情報一覧】
- サントリーお客様センター Q&A(世界の5大ウイスキーについて): https://www.suntory.co.jp/customer/faq/005517.html
- JWIC-ジャパニーズウイスキーインフォメーションセンター(定義): https://jwic.jp/story/definition/210916_01/
- サントリー企業情報(主なコンペテイション受賞歴): https://www.suntory.co.jp/company/award/
- アサヒビール ニュースリリース(「竹鶴ピュアモルト」世界最高賞受賞): https://www.asahibeer.co.jp/news/2023/0331.html
- ニッカウヰスキー(創業者 竹鶴政孝): https://www.nikka.com/story/founder/
- Suntory News Release(サントリーワールドウイスキー「碧Ao」新発売): https://www.suntory.com/news/article/13360E.html
- Drinks International(ISC 2025 山崎18年が最高賞を受賞): https://drinksint.com/news/fullstory.php/aid/11977/The_Yamazaki_18_wins_Supreme_Champion_at_International_Spirits_Challenge_2025.html
- アルコール・フード(響21年と山崎18年の価格比較): https://alcohol-food.gasemedaka.com/suntory-hibiki-21-years/
- たのしいお酒.jp(世界五大ウイスキーとは?): https://tanoshiiosake.jp/11935
- 内閣府(クールジャパン戦略資料 - 酒類輸出): https://www.cao.go.jp/cool_japan/kaigi/cj_strategy/5/pdf/kai5_siryo7.pdf

